問わず語り
2月の定期公演で劇団ドガドガプラスは川端康成原作『浅草紅團』に挑戦しました。
その折、激動の時代をたどる道しるべとなったのが、40年以上に渡り永井荷風が綴った日記『断腸亭日乗』でした。
戦前、戦中、書きたいものが書けない時代にあっては日記を書く行為ですら命懸け…荷風は膨大な原稿を隠し続けたといいます。
サイパン島玉砕をうけ、本土への空襲がいよいよ現実になった昭和19年秋…
誰の依頼も受けずに『書きたいもの』=『問わず語り』に取りかかった意気込みが『断腸亭日乗』に記されています。
何かあれば軍人さんに「たるんでいる!!」と制裁を受ける時代であっても、
その内容はまさに『たるみにたるんだ軟派の極み』…すなわち永井荷風の真骨頂です。
きな臭くはなりつつありますが、幸せな、ぼんやりとした現代に生きる私です、が
『先達の精神にあやかりたい』と痛切に感じながらの番外公演、永井荷風原作『問わず語り』に挑みます。
望月六郎